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車の窓が少し空いて 「早く乗れ」 前髪からポタポタと雨が垂れた、しかめっ面でそう言われ、急いで助手席に乗り込んだ。 「あの…………送ってくれるんですか?……なんで?」 前も夜遅く帰りが同じになった時は、こんなことなかったのに、こんなにも簡単に助手席に座っていることが信じられない。 「この雨ん中、傘ささないで濡れて帰るとかキツくね」 そう言うと、フッと一瞬笑った。 シートベルトを締めると、車が発進して、横目でちらっと運転している山崎を見ると、髪も服も雨に濡れていた。 「山崎さんも、濡れてますけど…あっ、ハンカチ使いますか?」 ビニール袋から、ハンカチを出そうとしたら、 「いらない」 即答で断られて、 「ですよね……すみません」 手に持ったハンカチを袋に戻して、袋の口を握りしめた。
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