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無表情で車を運転する山崎をチラ見する。
自分の気持ちに気づいてから、その存在自体がカッコ良く思えてくるのは不思議だ。
作業室とはまた違う、密室に改めて緊張してきて、
窓の外を見ていたら、道案内することもなく5分ほどで自宅アパートの前に着いた。
山崎と北島さんと飲んだ日に、送ってくれたのは1度きりなのに、覚えていてくれたことが嬉しくなる。
夜道で酔っていたのに、駅前ということもあり覚えやすい場所とはいえ、山崎の脳の中に、私の家の地図があると思うと、それだけの事で口もとが緩みそうになった。
シートベルトを外して、お礼を言うとしたのに、山崎の顔を見たら、やっぱり無表情で、
「すみません…」
この空間に喜んでいるのが自分だけなことに気づいて、ガッカリして謝ってしまった。
「……、ありがとうでしょ」
そう言いたかったのに、顔を見たら咄嗟に出てくるのは謝罪の言葉になってしまう。
「…ありがとうございます」
「どういたしまして」
棒読みで返された。
車から降りたくない、もう少しだけ、側にいたい。
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