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髪がきれいだと言われて、
ケアを怠らなくなった。
笑顔がいいねと言われて、
鏡を覗く回数が増えた。
……感じやすいと言われて、
従順に乱れるようになった。
私自身のあれもこれも、
乾先生の言ったとおりに
なっていたのだ。
冗談じゃない。
私はかっこいい女になって、
仕事も男も思い通りに生きて、
ダイアナ元妃のように、
きれいな靴を鳴らして
堂々と歩きたかったんだ。
けど、
気づいたらどうだ。
他人のものである男を欲しがって、
それを恥とも思わず
ただただ淫蕩に明け暮れて。
私のなけなしのプライドは
どこへ行った。
私がしたかったのは、
こんなことじゃない。
まだ20歳の大学生なのに、
私には前も後ろも、
右も左も上も下も
もうなかった。
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