第1章

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しかし、ブキミの立場は依然として変わらなかった。小学生の頃も、今も、変わらずクラスの大半から敬遠されている。成績もあまり良い方じゃない。私も幼なじみとして少しは庇ったりした方がいいのかな、と思う時もあるけれど、口を開けば必ずイラッとさせるブキミに、結局は自業自得だなと思ってしまう。 しかし「腐れ縁」ってこういうことだと思う。家は同じマンションで帰り道も一緒だし、今私が縁を切ったらブキミは完全にいじめのターゲットになりそうでちょっといやだし、なんとなく断ち切れずにいる。だからといって、ブキミの担当=私みたいな構図が出来上がっているのは納得いかないけれど。ブキミが空気を読んでない時に、みんなからの「あいつを何とか適当にあしらえ」という無言の圧力で、私が責められることがしばしばあるのだ。 夏休み中は夏期講習に明け暮れる毎日で、私は全然ブキミに会っていなかった。正直言って少し気が楽だった。クラスメイトの前でブキミの悪口に乗る必要も、それでいてブキミとの橋渡しを頼まれることも、ブキミの前でクラスメイトたちの冷たい言葉を隠すことも、すべてから解放されていた。 解放的な日々から二学期に入った矢先、まだ屋上前のあの部屋が、蒸し暑くて使えない時期に、小さな事件があった。 私とブキミのクラスが同じA組で、あとはうちの学年はB組しかない。そのB組に、坂巻くんという男子がいる。サッカー部に入っている。うちの学校は、男子の運動部はサッカーか野球しかなくて、大体カッコイイ系の子はサッカーで、まじめな体育会系は野球をやる。残りのオタクは科学部か帰宅部。合唱部に入る男子は今のところいない。 坂巻くんは、ちょっと長めのジャニーズっぽい髪をしている。校則違反だけれど、少し脱色もしているらしいという噂だ。ネクタイは下の方でゆるく結んで、グダグダになった紺のセーターの上に、ブレザーの代わりにサッカー部のジャージを羽織っている。都会の街をこの格好で歩いていたらかなりダサいかもしれないけれど、これがうちの中学ではカッコイイ系男子のトレンドだった。 その男子に、新学期が始まってすぐ、私は突然呼び出しを受けた。坂巻くんといつも一緒にいる、そっちは同じようなファッションだけれどお笑いタイプの吉野という子が、私の教室まで伝えに来た。
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