俺の事情

11/40
前へ
/54ページ
次へ
「何か?」 「いや。で?」 ほんわかとした気分になったのを悟られないように、ドヤ顔の中島をガン見してやった。 「常務に聞いてからと思ったんですけど」 俺のガン見が少しばかり中島にプレッシャーを与えてしまったようで、さっきとは打って変わって捨てられた犬みたいにシュンと縮まった。 「昨日のミーティングの件もあったので」 「うん」 お?もしかして? 「先方が10時半にはこっちに来れると言うので」 「うんうん」 ちゃんと出来たか? 「うちのカフェのデリバリーで良ければランチを挟んで打ち合わせというのはいかがでしょう、と返信送っちゃいました」 「……了解」 良く出来ました! もう少しまともなスケジュール帳を持たせるかな。そんな小さいものじゃなくて、いっぱい書き込めるやつで。 「じゃ、カフェにデリバリー頼ん…」 「いや、待って。店の雰囲気を見てもらおう。時間は11時20分。着いてすぐに提供出来るようにとだけ伝えておいて。目黒さんには来たらすぐに移動で申し訳ないけど」 「畏まりました」 「そういえば、お前、誕生日いつ?」 「8月10日ですが」 「随分先だな」 「はい。あの、常務?」 「ん?」 「珍しいですね」 「何が?」 「なんだか楽しそうっすね」 “楽しそうっすね”じゃねぇよ。 最後までドヤ顔しやがって、このやろー。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

133人が本棚に入れています
本棚に追加