俺の事情

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カフェのデリバリーを受け取ると、長机の上のファイルを避け紙ナプキンを置いたりして即席のカフェを作った。 ランチと一緒に中島が持って来た、改革推進派の予算額やイメージ図も、今はとりあえず机の端に追いやった。 「食事の時まで仕事を持ち込むタイプ、ですか?」 「いえ、食事はきちんと食べる派、です」 「良かった、俺と一緒だ」 そう言いながらも、 彼女が持ってきたファイルに収められたふカフェの写真をパラパラと目を通す。 現状維持、を推していることを伝えると、 「維持は大切ですけど、“意地”は禁物です、よ」 と真面目に言われてしまった。 「上手いことを言いますね。目黒さんの仕事への心掛けみたいなもの、ですか?」 「そうですね。実は祖母に言われた言葉の受け売りですけどね」 「意地、なのかなぁ……」 ポツリ吐き出していた言葉を拾い上げた彼女は、 「譲れないものや変えたくないものは誰にだってありますよね、きっと」 そう言って柔らかく微笑んだ。
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