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それからの俺はというと。
油断すると頭のてっぺんから抜けて行きそうな魂のしっぽを必死に掴みながら過ごしていた。
久しぶりに物凄く悩んでいた。
その悩みの中心にあったのが、
あいつからのエアメールではなく、
電話をかけてしまった彼女のことだということが、
自分でも驚いて、更に悩みを深くさせていた。
「私に、だったら嬉しいです」
そう言った彼女に何も答えられず、
濁した言葉を並べた俺に、
あの夜、彼女は真っ直ぐにぶつかってきた。
「私にじゃなくても、会いに行ってもいいですか?」
「いや、あのっ、本当にごめん。恥ずかしい話、ちょっと酔ってて、その、昔のね、そのぉ…」
「恋人を思い出してそれでちょっと寂しくて会いたいと思いながら私に電話してきたっていうんですか?」
「まぁ、うん。ほんっと、ごめん……」
「…………最低です」
「うん。本当に申し訳ない……」
「いいえ、私が、です」
「へ?」
彼女は深い溜息と共に「私が最低なんです」と吐き出した。
「弱ってるところを見せてくれて、私今すごく喜んでます……」
「目黒さん……」
「それに、弱ってるところにつけこもうとしてるんです。それを知った上でもう一度聞きます。今から会いに行ってもいいですか?」
「ごめん、今夜は……」
「わかりました。では、おやすみなさい」
好意を抱いてくれているかもしれないのはわかった。
ストレートな言い方ではないけど、告白みたいなもんだ。
それを受けて俺はまた言葉を濁すだけなんて、
本当に情けない。
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