俺の事情

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あいつが、 田母神玲乃という女性がいなくなって出来た穴は大きかった。 けれど、 あいつの教育を受けてたエリが思いの外成長し、代わりに採用した見習いも順調に腕をあげてきていた。 売上も悪くない。 あいつが力を入れていたホームページも訪問数はゆっくりに、でも着実に増えていたし、 あいつの抱えてた顧客が離れていくことも数人で済んで、 結果プラマイのプラ、で。 大きいと思っていたのは、 私情を挟んだ俺だけのようだった。 そんなもんなのか。 そんなもんなんだろうな。 あいつがいなくても、 日々は過ぎていく。 あいつがいなくても、 やることは山ほどある。 英語が通じず困っていないだろうか。 アイツと……和也の野郎とケンカなんてしていないだろうか。 元気、だろうか。 寂しい。 会いたい。 恋しい。 封じ込めては時折緩む蛇口を、 キツく締めながら暮らし、 気づくと2年経っていた。 俺があいつを、 アイツと旅立つのを、 精一杯の笑顔で見送ってから。
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