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レセプション当日。
店舗の大家さんや、工事、食材の業者さんを始め、多くの方々を招いた中に、
アンダンテの鈴井社長と高橋も来てくれたが、そこに彼女の姿はなかった。
お祝いの言葉を各方面から頂きながら、機を狙って高橋を捕まえて立ち話に持っていった。
差し触りない感謝の言葉や労をねぎらう言葉を並べ、どうにか綺麗な流れで彼女の名前を口に出来た時だった。
高橋の口元がきゅっと上がった気がした。
「目黒さんはお元気ですか?」
「お陰様で。まぁ、コンテストも佳作とはいえ、入賞ですし。優花子…あ、目黒もとても喜んでいましたよ」
え、今、優花子、って言ったか?
「でしょうね」
「えぇ。とても」
気のせいかな。
うん。気のせいにしておこう。
「ただ、途中で私に引き継ぐにあたってはいくらか残念そうではありましたが」
「あ、そうでしたか!」
そうなのか。
良かった。
彼女が携わらなくなっても気に留めてくれてたことを知って、俺は今とても安堵している。
「でも、滅多にあることでは無いですしね。優花子、あ、目黒も女性ですしね、そういったコンテストに集中するのが難しくなる場合もありますからね。女性蔑視と取られてはアレですが」
あれ、また、呼んだ?
気になるけど、冷静に返そう。
引っかかっててもしょうがない。
「と言うと?」
「結婚や出産、ということがあれば時間を取るのがやはり、ね」
「あぁ、なるほどね」
「そういったことも踏まえて、今回のことはうちの親も喜んでくれて。優花子も、あ、目黒もいいタイミングだったかと」
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