俺の事情

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「嫉妬?」 「敵わない……っていうか、目黒には俺なんてはなっから見えてなくって」 「……」 「ただ、こうやって無事にオープンを迎えるまでお仕事をご一緒させていただき、八神常務の人となりを拝見していくにつれ、目黒が惚れるのもわかるな、と」 高橋は淡々とそこまで言うと、コホンと咳払いをした。 「ご存知かわかりませんが、目黒は、入社してから特にこれといった大きな仕事も無く、自ら率先してというタイプでも無く。ドン臭くて、CADも苦手だし」 「そう、でしたか…」 「それでも鈴井社長は彼女のセンスをえらく気に入っていて、自信が無いと言う目黒をダメ元でコンテストへの参加させて、今回の御社のリニューアルの担当させたんですよ」 「………」 「まさかコンテストの一次審査を通るとは正直社長も想像して無くて…目黒は両方やります!って意気込んでたけど……」 そこまで言うと、高橋はわざとらしいため息を吐いて、 「あの目黒がヤル気出すんだもん、社長も俺らも気づきますよ、その原動力が何かって」 手にしたシャンパングラスを口へ持っていき、コクンコクンと喉をうるおした。 「で、目黒は何と?」 「あ、えっと、今日時間があるかと。でもこのあとは生憎都合が……」 「あの馬鹿、状況わかってねぇんだから!あいつは本当に手がかかる!八神さんは明日のオープンにはお立会いに?」 「いや。俺がいても店には役に立たないから休みにしてる……けど」 「目黒は休みです」 高橋はグラスを近くのテーブルに置き、スーツの裾をパンっと払い、 その手を身体にくっつけて背筋を伸ばし、 「常務。お仕事ご一緒出来てとても勉強になりました。ありがとうございました。今後とも是非私共アンダンテと………目黒をよろしくお願い致します」 彼は深く頭を下げた。
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