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『お久しぶりです。メッセージ拝見しました。申し訳ありませんが本日は調整が難しいです。明日は休みですが、一人で横浜に餃子を食べに行く予定があり忙しいのですが、偶然にも11時には御社の近くを通る予定です。偶然にも助手席には若干のスペースがあります。いかかですか?』
一瞬「?」となる八神さんからのメッセージを徐々に理解していくにつれ、スマホを持つ手が汗ばんでいく。
都合よく受け取ると、きっとこれはデートのお誘い。
『よろしくお願い致します。』
それだけを送り返すと、私は慌てて帰り支度をし始め事務所をあとにした。
お客様へ抱いてしまった恋心を、閉じ込めるどころか押し付けるように告白してしまったというのに。
それに対して迷惑だと言わずに、私に会うのを快諾してくれた。
それがただ嬉しい。
コンテストの一次審査通過の知らせに、喜びよりも焦りを感じた。
距離が離れてしまう、と。
せっかく少し近づけたのに、と。
最後まで一緒に仕事をしたかった、と。
でも、だからと言って駄々をこねる訳にはいかなくて。
会社に大きな貢献も出来ずに燻ってる私なんかを、「お前はセンスがある。じっくりやればいい」と見守ってくれている社長への恩返しの意味も込めて、担当を外れてコンテストに集中することに決めて、
私はふと気づいた。
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