俺の事情と彼女の存在

彼女の事情

もう関係者ではないんだよな。

それってつまりは私が八神さんへ個人的なメッセージを送っていいんじゃない？

そう良いように解釈しては、いやいやダメでしょ、と悩むうちにその機を逃したままになっていて。

『直接ご挨拶出来ずに申し訳ありませんでした。私で良ければ何かありましたらいつでもご連絡ください』

そんな風に送っていれば良かったのかもしれないのに、迷っているうちに５月が過ぎてしまって。

『いよいよ耐震工事ですね。予報では雨の少ない梅雨になるそうで、順調に進むといいですね』

そう送っても良かったのかもしれないのに、
明日にしようと引き延ばすうちに６月が過ぎてしまった。

『コンテストの準備に煮詰まってます。あの桜の場所を見下ろせるビアガーデンがあると聞きまして、お時間あるようなら是非暑気払いに行きませんか？』

素直になって送ってみればよかったのに、あっという間に７月も終わって。

『お盆休みはあるんですか？』

『台風の影響はありませんか？』

『コンテストがどうにか無事に終わりました』

『いよいよリニューアルオープンですね。おめでとうございます』

きっとどんなことでも良かったと思うけど、どれもが伝えたいことじゃない。

そう思い、送るのを躊躇ってしまっていた。