彼女の事情

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翌日。 時間よりも15分早くに会社前の道路をフラフラと歩いては、 あの車かな、それともあの車かな、と行き交う車を凝視していた。 約束の5分前。 右手からやってきた車がハザードをあげてスピードを落として停車した。 運転席の窓が開き、 「ごめんっ。待たせちゃった?」 八の字の眉で八神さんが私を見つけて声をかけ、コッチコッチ、と手招きをする。 その手に呼ばれるまま近づいてから車のハンドルが逆だと気付いて背筋がシャキッとなる。 「車来てないかな。気を付けて回ってきて?」 「はい」 助手席に乗るには一旦道路側に出ないといけない。 左右を確認して道路へ出ると、八神さんが丁度助手席のドアを右手で開けてくれているところだった。 「お邪魔します」 「はい、どうぞ」 初めて乗る外国車に緊張しつつ、左にいる八神さんを凝視して、想像したよりも可愛らしい服装に思わず頬が緩んでしまう。 スーツ姿しか知らなかった私には、紺色のカーディガンに濃い色のチノパンの八神さんが新鮮で胸のドキドキが半端ない。 「ん?」 「い、いいえ、何でも……」 「ははっ。じゃー、行きましょうっ!」 ルームミラーと目視で左右と後方を確認すると、 「餃子♪餃子♪」 八神さんは楽しそうに笑みをこぼしながらギアをDに入れて発進させた。
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