彼女の事情

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「CD、ですか?」 「うん。悪いけどそれ、そこに入れてくれるかな?」 「ここ、ですか?」 「そうそう。さんきゅ」 言われるがままにその無地のディスクを取り出してセットすると、 吸い込まれていったCDから、 ピアノの柔らかな伴奏が流れ出した。 そしてほどなくすると、 ♪~~I don't know the meaning of LOVE until I've met you I'm so glad whenever you laugh at the same time~ それほど聞き取りにくくない英語の歌詞と、 胸の奥まで届く歌声が車内に流れていく。 誰の歌だろう。 この曲に何の意味があるんだろう。 ちらっと盗み見る八神さんは、 口を少し尖らせて真っ直ぐに前を見て運転に集中している。 問うことも出来たかもしれないけれど、 引き込まれるその歌は途中で切るのを躊躇うほどで、 最後まで聞こうと私は思い、同じように前を見て、出来るだけ歌詞を聞き取ってみようとした。 ♪~~You are the ONE Two hearts beat as ONE We are meant to be, Darling~ わかる。 これは、愛の歌だ。 誰かが、誰かを想って、 その気持ちを伝えるために歌っている、 そんな愛の歌。 ♪~~I don't need words anymore I hope that as long as you're there We will be alright? We know the love is here Just you and me~
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