133人が本棚に入れています
本棚に追加
中華街のあの門が見えてきた。
秋空に映える色鮮やかな門を前にして、八神さんがピタリと歩くのを止めて、人の流れから外れた。
私は慌てて八神さんの左横へ同じように並んだ。
「目黒さん」
「はい?」
湿気の無い風が吹いて、美味しそうなニオイを運んでくる場所で、
八神さんは、
「その、好きです!って真っ直ぐに伝えてくるところがさ」
「引きますか…?」
「いいや……むしろ」
「っ!!」
大きくて男らしい骨格をした手で私の右手をふわりと包んだ。
「あのさ、好きになってる」
「え………」
「好きだよ、もうとっくに……」
グッと引き寄せられ、耳元で囁かれた声は、低く、照れ隠しなのかちょっとだけ困ったような笑ったような、優しくて甘い声で。
初めて聞く八神さんのそんな声に、
私の涙腺は崩壊寸前で。
「や、やがっ………み、さっ…」
「だからー泣かせるつもりないんだってば」
そう言って笑って、
「こうしたらもっと泣いちゃうかな?」
じーっと私の顔を見つめたまま。
ゆっくりとゆっくりと。
繋いでいたその手の指を絡めてぎゅうっと握り、
「恋人になってくれますか?」
そう言って、ポロポロと涙を零す私を見て、眉を下げてまた笑った。
最初のコメントを投稿しよう!