俺の事情と彼女の存在

俺の事情

失敗は許されないんだが、しかし。

『どんなコンセプトで行くか』

俺、八神翔は、最も肝心な部分を実はまだ決めかねていた。

明日にはカフェのインテリアコーディネーターとの打ち合わせだというのに、

現状維持でいくか新しいスタイルを取り入れるか、議題は今日もそこで進退を繰り返していた。

俺の意見はこうだ。

まず、ここの店舗は、出来上がったモノをそのままで利用していたからか、特にこれと言った自分のアイディアも理想も詰め込んではいなかった。

それは思い入れが無いということではなく、あくまでも『自分の色』はそこになかったというだけ。

そんなものなくても、充分にやっていた。

今更何をどうしようと？

耐震工事をし、店内を綺麗にするくらいでいいじゃないか。

今まで通りで何がいけない？

だから｢現状維持｣でいこう、と。