俺の事情

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改革推進派には、人件費も含んだ予算と大まかなイメージ図を明日の昼には提示するようにと告げ、一旦はミーティングを終わらせた。 「明日の朝一番に」と言わなかっただけ有り難く思って欲しいものだ。 俺は、24時間がちゃんと予定で埋まっていないともったいないと思ってしまう性分だ。 そして、食事の時間はできるだけ同じ時刻で設ける主義だ。 なるべくならば、食事中に仕事を持ち込みたくはないんだが、 今日は仕方なく、明日打ち合わせをする予定の《株式会社アンダンテ》さんのホームページを流し見ながら軽食を取っていた。 現状維持、といえども、 俺だって多少は変化を求めているんだ。 漠然とだったが、口頭で伝えた俺の脳内により近いものを描いてくれたのが、このデザイン事務所だった。 画面に並ぶ過去の実績例も、悪くない。 先月の初めての打ち合わせには、社長の鈴井さんと、鈴井さんが「駆け出しだけどセンスはいい」と紹介したコーディネーターが同席した。 デザイン事務所に昨年度採用となった女性のインテリアコーディネーターで、 どこか自信なさそうなのは社長が言う通り“駆け出し”だからだろうか。 不安そうな女性新人コーディネーターの表情を思い返し、喉でつっかえそうになったサンドイッチを少しばかり温くなったコーヒーで流し込んだ。
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