俺の事情

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明日は確か彼女が一人で来ると言っていた。 「まだ何も決まってなくて。何かイイ感じのはありません?」なんて突然過ぎて、あんな新人に対応も難しいだろう。 参考に出来るような資料を探していることだけをメールで依頼しておこうか。 そう思い立って、机上の名刺ホルダーをクルクルと回した。 えぇと、確か…… 「……あったあった」 パタン、と開かれた名刺のページ。 「《目黒優花子》、さん」 そこに現れた彼女の名前を、なんと気なしに読み上げた。 目に飛び込んで来たピンク色の彼女の名刺。 まるで今朝見たニュースの桜のようにそんな紙切れ1枚が胸をざわつかせた。 何でだろう。 パソコンをホームページからメール画面に切り替えて、 「目黒優花子さん、か………」 意味もなくもう一度彼女の名前を音読すると、胸のざわつきが今度は擽ったさに変わって身体中に巡った。
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