ターゲット確定

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 『ジムに首ったけ』は僕らの予想を裏切り、ゴールドジムに通い詰めてストイックに体を鍛える男の話だった。 僕も最初は失敗したなと思ったけど、なかなかどうして面白い。特に主人公ワタルの笑顔の幼さと筋肉のギャップがいい!  まったくこんな名作見逃してグースカ寝てられる神経がわからない。 「……映画、イマイチだったね」 彼女は手首をさすり、長い腕を大きく上に伸ばした。 「そうですね」 僕は外した手錠をリュックにしまいながら適当に頷く。 こんなビッチにあの映画の素晴らしさはわからないだろうから、熱くなっても仕方ない。 「もう!ため口でいいってば。それよりアレしよ!」  そう言って真洗先輩は僕をゲームセンターへ引っ張って行った。 彼女はお金を入れ一番奥のプリクラ機に僕を押し込むと、迷い無くカーテンを閉めた。 「ねぇ」 と、熱く僕を見る視線。 おお!さすがの僕もドキドキしてきたぞ。  これは……この感じはアレだ。 彼女はアレを求めてる!  そう感じた時、真洗先輩が唇を突き出し目を閉じた。  僕の胸はバックンバックンと高鳴る。彼女の唇が目の前で僕を誘う。せかすようにプリクラ機のシャッターが切られていく…… (……ふん、悪くない)
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