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「真洗先輩! ちょっと見ててよ」
僕はそう言ってリュックからバットを取り出し、魔法の言葉「まぁいいからまぁいいから」を繰り返してざわつくギャラリーを牽制しつつバッターボックスへ乱入した。
どん引きしている小学生達を尻目に、突然のバッター交代劇に驚いたピッチャーのヘロヘロボールを容赦なく打ち返してやった。
それはもう見事な特大ホームランだ。
僕は真洗先輩に向けて大きくガッツポーズをつくり、小学生と保護者達の罵声を浴びながらゆっくりとダイヤモンドを一周した。
「……すごいね」
真洗先輩は感動したのか噛みしめるようにそう言った。
作戦は大成功だ。
惚れさせてから殺す方が美しい。僕の中の美学が叫んでいる。
突然、グゥと腹の虫が鳴った。
男らしさを見せつけていたら急にお腹が空いてきたのだ。後で殺人を犯すのにもここは何か食べて体力をつけといた方がいい。
「ねぇ先輩、何か食べようか」
バットをリュックに押し込みながら僕が聞くと、
「もうっ!さっきから敬語いいってば。あと、先輩じゃなくてキャリーって呼んで」
彼女は中三とは思えない妖艶な仕草で微笑んだ。
ちなみに「食べようか」は全然敬語じゃないんじゃないかとは思ったけど、そんなのどうでもいい。うーん、やっぱキャリーはかわいい。
その時、突風がキャリーのミニスカートを揺らした。
悪戯な風は思わず周囲の人間が「ワォ」と欧米化してしまうくらいの脚線美と肉感的なパンチラを提供した。
当然、道行く男達のあそこもワォとなった。
僕はといえばワォとなる暇も無かった。
何故なら背中のリュックからガムテープを取り出し彼女のひらひらのミニスカートをテープで固定してタイトスカートにするのに必死だったのだから。
知らなかったよ。僕って嫉妬深かったのかなぁ。
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