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キャリーはペディキュアの塗られた足先で僕のリュックの中身をかき回すと、みるみる曇った表情になった。画面の女優の妙な高音声が響く中、僕の差し出したモノを押しのけ、ホテル備え付けの灰皿とライターを使いゆっくりと煙草をふかした。
そして1本吸い終わり、未だ静かな僕の要塞を一瞥した後、「帰りましょ」と静かに言った。
今日はだめだったけど、また次がある。
次ヤってから殺ればいいさ。僕ならヤれる!ああ、殺れるさ!
そう自分を納得させ、服を着た。さすがにキャリーの顔は見れない。彼女の後を追うようにうつむき加減でホテルを出た。
ドンッ!!!!!!!
気まずさで彼女の足首しか見ていなかった僕は入店するカップルにぶつかった。
「あ、どうもすみません」
反射的に謝る僕に、「いえいえ」と極上の笑顔を向ける青年。
!!!
驚きのあまり声も出ない。
出会ってしまった……。
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