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急に僕の半径1メートルの空気がなくなったように息ができなくなる。
胸が高鳴り、下腹部の方から熱い何かがたぎる。
間違いない、そこにいたのは『ジムに首ったけ』のワタルだった。
「うわぁ! ねぇ? 見た?ワタルだよ!」
ワタルの背中を見送り、僕は興奮気味にキャリーの胸元を叩いた。
「ワタル?」
彼女は眉間に皺を寄せ怪訝な顔をする。
「もう! 今日見たじゃないのさぁ! ジムだよ!あの映画の主人公!」
あんな天使の顔を忘れるなんて!これだから……
「……ああ、見たわ」
そう言って彼女は僕の肩からリュックを奪い取り、中に入っていたロープで僕を縛り上げた。
ええ!? なんだってんだよ、意味分かんないよ!ああ、もうなんて日だ! もうやめてやる! こんな女なんかこっちからお断りだぜ! それにしても今日は記念日になるはずだったのに、だいな……し……? あれ? やだ、なんか……うそぉ。
いつの間にか僕の艦隊は戦闘モードに突入していた。
「え、あ、ちょっと」
初めての事に戸惑う僕に、キャリーはため息をついて去って行く。
正座したまま縛られた僕は、キャリーの右へ左へ揺れるヒップを眺めて興奮を鎮めようとする。だけどワタルの笑顔が脳裏から離れずそれを阻止するんだ。
ああ、パパ!ママ!おじいちゃん!ごめんなさい。どうやら僕の代で殺人鬼の血は途絶えそうだわ。
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