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「先輩、おまたせしました」
彼女の前で軽く手をあげる。皆の(そりゃそうだよな)的なため息が聞こえてくる。
やはり僕らは美男美女、学校のみんなの言うお似合いってやつなのだ。
「今日は誘ってくれてありがとう。急で驚いたけど」
そう言って彼女は眉根を寄せる。
「……山登りでもするつもり?」
大きな瞳は僕のパンパンに膨らんだリュックをロックオンしている。
なるほど、山か……その方が人目もなさそうだし、もしバラしても後片付けも楽そうだ。いいかもしれない。
「そんなつもりなかったけど、それもいいかも知れませんね」
僕は足下にリュックを下ろした。
「じゃ、これは失敗ね」
彼女はすらりと伸びた足を見せつけるように斜めに組み、先端に引っかかっている華奢な赤いミュールをぶらぶらさせた。
さすが、真洗先輩だ。僕が選んだだけのことはある。
店内の男の視線のすべてが彼女の艶めかしい足に集まる。
たぶん皆ギンギンになっているのだろう。店内の温度が一度上がったのを感じる。僕ももちろんギンギンに、と思いきや僕のあそこはスーンとしていた。
まぁ、僕は生まれついてのモテ男。足の一本や二本じゃ微動だにしない男なのさ。もともと彼女は僕にとってただの獲物なんだしね。
今日のデートにノープランで挑んだ僕は「とりあえず、映画でも」という彼女の提案に喜んで乗っかった。
──包丁もある。暗いところでブスリ、なんてのも悪くないじゃない?
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