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意識高い系の彼女はシネコンを素通りし、迷い無く僕をミニシアターへと誘った。
「うーん『深夜の内臓祭り』と『ジムに首ったけ』かぁ。今日はホラーよりラブロマンスかしら?」
そう言って彼女は僕のシャツの袖口をつかんだ。
「真洗先輩が望むなら」
僕は微笑んで、『ジムに首ったけ』のチケットを二枚買った。
……良かった。実は僕はスプラッター映画が苦手だ。
いや、もちろん未来の殺人エリートの僕がホラー映画が怖いというわけはない。ただちょっと無意味に知らない人の血がドバドバでたり、内臓がブラーンなどという映画は気持ち悪いんだよね。
たぶん少し潔癖気味なのかもしれないな、うん。
映画が始まるとすぐに真洗先輩は僕の手をそっと握ってきた。
……積極的な女は嫌いじゃない……
僕は真洗先輩の手を握り返す。
それを了承ととったのか、彼女の手はさらに積極性を増してきた。
ムラっときたらヤるのが礼儀だと父に教わった。だけど残念なことに僕のアンテナはまだそこまでには至っていない。
思いの外、映画に集中していた僕は、ジーンズ越しに太ももをなでなでする真洗先輩を少し疎ましく感じていたので、リュックからおもちゃの手錠を取り出して彼女の両手首を固定してやった。
彼女は映画がつまらなかったのか、しばらくは僕に何か必死に話しかけていたけど、無視し続けていたら大人しくなった。どうやら眠ってしまったようだ。
──ふぅ。これでゆっくり映画が見れる。
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