2章 血は蜜の味

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・ グレイは首筋から牙を抜くと噛み跡のついた傷口を舌先で優しく丁寧に舐めて癒す。 そして、そのまま唇をルナの耳元につけてバリトンの声音を響かせた。 「いいか……俺以外の男に躰を開くんじゃないぞ… 俺以外の“魔物にも”──だ…わかったな…… それさえ守ればお前に自由を与えてやる。 だが、覚えておけ… お前の行動、思考はすべて俺の支配下にあるということを……」 グレイは鋭い眼差しをルナに向ける。そして小さな指先を手にとり唇を落とした。 「我が花嫁…… 儀式の時がくるまでその身の純潔は我、主に捧げる為に守りたもう── いいか…お前の主はこの俺だけだ… けして、異なるものとまぐわうな」 グレイはルナの額に指をかざし逆さに十字をきる。 「今宵、満月の夜‥お前は俺と契約を交した。 お前はもう俺の婚約者(フィアンセ)だ‥どこで何をしていても俺に解るということを忘れるな…」 ルナの額には逆さ十字の赤い傷が浮かびグレイはそこにそっとキスをする そしてルナは眠るようにゆっくりと意識を手放した──。
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