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(散々、あたしの身体にあんなことしたくせにっ…)
ルナはバカにされたと思い枕をグレイに投げつける。だが、その抵抗も虚しく枕は魔力で叩き落とされていた。
ムキになり、振り上げたルナの腕をグレイは掴んで強く引き寄せる。そして間近で赤い瞳を光らせて、妖しい笑みを浮かべ囁いた。
「勝気な女はタイプだ……そんな女をねじ伏せて泣かせるのは無性に興奮する──」
バリトンの声を二重に響かせてグレイは凄む。低く唸るように言葉を吐くと、鋭く光る牙を覗かせた。
「──……」
ゴクリとルナの喉元から唾を飲み込む音がする。そのグレイの姿でルナは我に返った。
やはり彼は魔物──
今の仕草で正気に戻ったルナは、恐怖にうち震えることしかできない。
見た目はどんなに人間のようであったとしても、どれだけ紳士的に振る舞っていても──
魔物の中でも知恵を誇る吸血種族。目の前にいるのはその吸血鬼の中でも偉大で絶大な力をもつ伯爵階級の魔物……。
「──あっ…やっ…」
急にルナの首筋に軽く咬みつくとグレイは舌を這わせる。そして、まるで暗示をかけるように耳元で囁いた。
「喜ぶがいい……次からはお前のここから食事をしてやる。そして満月の宵にお前を抱く──」
ルナの背筋がぞくりと震える。グレイはその言葉を残すと、いつものように姿を消し去った。
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