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「来月、結婚するんじゃが」
「え――!! 結婚!?」
そう叫んだあと、伊月さんが「失恋した……」と言って崩れ落ちる。
もはや突っ込む気力もない。
「相手はどんな人?」
「大阪におる同い年の女の人なんじゃ。二年前にたまたまこの店に来て、道尋ねてきたんじゃ。時間あるって言うけぇ、暫く話しよったら意気投合してな」
「その人も未婚?」
「いや、一回結婚しとる」
「あっ、もしかして、前に用事があるってお洒落して出掛けたのって、その人に会うため!?」
立ち上がった伊月さんが問い詰めた。
「そうそう。怪我して入院したって言いよったけぇ、見舞いにな」
「へ――……」
としか言いようがない。
「で、結婚を機に店を改装しようと思って。名前も変えようかな。二週間くらい店閉めないけんけど」
「なんで名前変えるの」
「もともと結婚するつもりなかったし、一生独身じゃ思いよったけぇ、一人でゆっくりできるようなこじんまりした店にしようと思って、お一人様のための店『For One』」
「あ、一応、意味はあったんだ。もしかして名前変えたら、」
「きっさFor Two」
「やっぱり」
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