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「おかえり、琉くん。どうしたん」
琉斗はコホコホと咳をしながら奥の部屋へ直行した。
伊月さんが代わりに答えた。
「ごめんなさい、マスター。今日、保育園で友達と喧嘩したみたいで。取っ組み合いになって怪我させちゃったんですよ」
「怪我ってどんな? 琉くんは大丈夫なんか?」
「勢い余って突き飛ばしちゃって、棚でおでこぶつけちゃったんです。琉斗も腕を噛まれたりしたみたいで。まあ、両成敗なんですけど。ただ、原因をはっきり言わないんですよね。先生も見てなかったらしいから」
伊月さんは怒っているというより、落ち込んだ様子で琉斗のもとへ行く。
僕の前を横切る時に目が合った。伊月さんは軽く手を挙げて、
「オス、お疲れ」
と、いつもの口調で言ったが笑いはしなかった。
奥の部屋から伊月さんと琉斗の話し声が聞こえた。
二人の話し声というより、ほとんど伊月さんが一人で何かをしゃべっている。
琉斗は気のない返事をして時々咳込んだ。
徐々に伊月さんの声が尖ってくる。
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