1 coffee

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***  昨夜の僕のことを聞いて腹を抱えて笑っているのは、大学時代からの友人である。  イヴに引き続きクリスマスの予定もなくなり、そんな時に限って仕事は定時に終わるので、アフターファイブを行きつけの喫茶店で過ごしていたところに、友人の隆史から電話があった。  居場所を聞かれていつもの喫茶店だと答えたら、すぐに飛んできてくれたので、笑い話のつもりで昨夜のことを話したら、本当に笑い話にされてしまった。         机をバンバンと叩いて声が出なくなるまで笑っている。  店内には静かでお洒落なジャズソングが流れていたのに、せっかくのドリス・デイもこいつの笑い声で台無しだ。  話してしまった自分が迂闊だったとはいえ、ここまで笑われると腹が立ってきた。 「お前、笑いすぎだろ。俺に失礼だと思わねぇのか」 「だって、そんなドラマみたいな話あるんだと思って……俺もその場にいたかった~」  ヒィヒィと堪えながら言う。  隆史は水を一口飲むと、ようやく「はあ、可笑しかった」と呟いた。 どうやら落ち着いたらしい。 「でも、どうせいつか別れる相手だったんだろ? まぁ、いいじゃん」 「そうなんだけどさ」 「常磐(ときわ)ってさ、昔から人の彼女に横恋慕するの好きだよな」 「変な言い方すんなよ。否定はしないけど。なんだろ、人のものが良く見えるっていうだろ? 俺の場合、それが女」  そういえば、さっきまで目の前でコーヒーを淹れていたマスターがいない、と気が付いた時、カウンターの奥から初めて見る女が現れた。  僕は隆史との会話を続けながら、マスターの行方とその女が何者かを推測していた。
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