3 coffee

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「諒さんは総社の家でずっと暮らしとって、伊月ちゃんは結婚して岡山市に住んどったんじゃけど、諒さんには結婚反対されとったらしい。で、ほぼ勘当状態で結婚して、離婚して、子ども産まれても諒さんと伊月ちゃんはほとんど連絡取り合わんかったんじゃて。諒さんは心筋梗塞で孤独死。数年ぶりに見た父親の姿が腐りかけの状態じゃで。琉斗くんには見せられんわな」 「今から食事……」 「アホ! ……で、葬式で伊月ちゃんに再会したら、なんとまあ諒さんにそっくりなんじゃが。伊月ちゃん全然泣いてないのに、わしだけおいおい泣いたわ」 「かっこ悪」 「食うな」 「ごめんなさい」 「どんな暮らししよるか聞いたら、古いメゾンに親子二人でなんとか生きてます、じゃって。仕事は子どもがおると思うようにならんらしく、ちょうど職が無くなって途方に暮れとった時らしい」 「あ、去年の夏、そういえば一週間くらい店閉めてたよね。もしかして、それ?」 「そうそう。手続きとか相続とか大変でな。手伝っとったんじゃ。親戚もあんまりおらんらしくて。伊月ちゃんは諒さんのおった家で住む気はないって言いよったし、岡山におる意味もないんなら家は売って、神戸に出てくるよう勧めたんじゃ。ほんなら、わしの店で仕事できるじゃろ」 「……ふーん。そういうことだったんだ。それにしても、面倒見過ぎじゃない?」 「お前には分からんじゃろうけど、諒さんに世話になったのに何も返せんまま連絡取らんようになったんが、ずっと心残りじゃって。こっちから連絡することもできたんじゃけど、向こうは大変でも気遣うばっかりじゃろ思うて連絡せんかったら、諒さん死んでしもた。じゃけん、できる限り伊月ちゃんと琉斗くんの力になってあげるんは、せめてもの恩返しかな。それに、わしには自分の子どもがおらんけぇ、伊月ちゃんは娘みたいじゃし、琉くんも孫みたいで可愛いしな」 「……ふーん……」
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