4 coffee

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 金曜日の夜、一時間ほど残業をして喫茶店に寄るには中途半端な時間に仕事を終えた。  せっかくの金曜の夜にまっすぐ帰宅する気にもなれず、駅前の本屋へ寄った。  ファッション雑誌や時事誌を立ち読みしたあと、ビジネス書のコーナーをうろうろする。  目の前にサラリーマンのための本と、起業家のための本がある。  どちらを手に取るかで僕の仕事の方向性が決まる気がする、と地味な究極の選択をしていたら「常磐くん」という声が隣で聞こえた。 「あっ、お疲れ。こんなとこで会うとはね」  大林さんだった。今日も白いコートが眩しい。  髪を巻いていないだけで雰囲気がガラリと変わった。  静かな店内では話しにくいので外へいざなった。 「本屋の前通ったら常磐くんが見えたから。これから用事?」 「いや、ちょっと寄っただけ。大林さんは?」 「友達と約束してるの」 「そうなんだ。楽しんできて」 「じゃ」と言って、体の向きを変えようとしたら大林さんが遠慮気味に口を開いた。 「どうかした」 「まだ時間があるんだけど、少し話さない?」
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