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「はは、いつもの口調でいいよ、ローガン。ーーおや、髪に血が付いているね」
団長の一言に、俺は驚いてローガンを見た。
確かに、こめかみ付近に赤い液体が少しだけこびりついている。白髪のせいか、よけい血の色が際だっていた。
なぜ気づかなかったのだろう。
俺はローガンの頭を掴み、傷口を見た。さすが、人狼なだけあってすでに塞がりつつある。
だが、痛々しかった。
「ローガン、この傷、いつ付けられたんだ?」
「いや、別に・・・・・・」
珍しく言葉を濁す。
俺は察した。
「もしかして、俺を助けるときに付けられたのか?」
思わず語気を強くして訊ねると、ローガンは年上とは思えない情けない表情を浮かべ、首を激しく横に振るった。
「こんなのかすり傷だって! お前が気にする事じゃないから」
「馬鹿、頭はまずいだろ! 早く手当をーー」
「ライアン」
柔らかな声と共に、肩に大きな手が置かれた。
振り返ると、団長がいつものように優しく微笑んでいた。
「大丈夫。擦り傷だから、消毒しておけば大事に至らない。落ち着いて」
「・・・・・・すみません」
「君は昔から仲間想いだからね」
団長は、そう言って俺の頭を撫でた。
ずっと昔、最初にこの人の顔を見たときも、こうして撫でてもらった。
十八にもなって頭を撫でられるのは恥ずかしいが、団長の手に撫でられるのは好きだった。
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