第一章

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「はは、いつもの口調でいいよ、ローガン。ーーおや、髪に血が付いているね」  団長の一言に、俺は驚いてローガンを見た。  確かに、こめかみ付近に赤い液体が少しだけこびりついている。白髪のせいか、よけい血の色が際だっていた。  なぜ気づかなかったのだろう。  俺はローガンの頭を掴み、傷口を見た。さすが、人狼なだけあってすでに塞がりつつある。  だが、痛々しかった。 「ローガン、この傷、いつ付けられたんだ?」 「いや、別に・・・・・・」  珍しく言葉を濁す。  俺は察した。 「もしかして、俺を助けるときに付けられたのか?」  思わず語気を強くして訊ねると、ローガンは年上とは思えない情けない表情を浮かべ、首を激しく横に振るった。 「こんなのかすり傷だって! お前が気にする事じゃないから」 「馬鹿、頭はまずいだろ! 早く手当をーー」 「ライアン」  柔らかな声と共に、肩に大きな手が置かれた。  振り返ると、団長がいつものように優しく微笑んでいた。 「大丈夫。擦り傷だから、消毒しておけば大事に至らない。落ち着いて」 「・・・・・・すみません」 「君は昔から仲間想いだからね」  団長は、そう言って俺の頭を撫でた。  ずっと昔、最初にこの人の顔を見たときも、こうして撫でてもらった。  十八にもなって頭を撫でられるのは恥ずかしいが、団長の手に撫でられるのは好きだった。
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