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「さあ、君たちの顔も見たし、私は戻るよ。報告はいつも通り書面でいいから、すぐに部屋に戻って結構」
「了解です」
ローガンと声を合わせて答えると、団長は軽く手を挙げ、背を向けた。
だが、途中俺の方を振り返った。
「そうだ。ライアン、今度食事に行こう。いい店があるんだ」
「食事、ですか?」
俺は眼をしばたかせた。
団長は忙しく、そんな暇はないはずだ。
彼と最後に食事したのも、もう何年も昔の話。
俺が返事に困っていると、団長は肩越しに苦笑した。
「息子と食事をするのに、文句を言う人はいないだろう。時間を空けておいてくれ」
「はい、分かりました」
「ありがとう」
大勢の護衛に囲まれて去っていく団長を見送りながら、俺は再度ローガンの傷口を確認した。
「ローガン、医務室にいこう。消毒してもらった方がいい」
「これくらい、かすり傷だって。お前は心配しすぎなの」
「じゃあ俺の部屋で消毒してやるから、来い」
「ちょ、ちょっと待てよ!」
俺はローガンの腕を掴むと、困惑するかれを引きずるようにして中へ入った。
簡素なエレベータに乗って居住区まで降りると、等間隔で並んでいる扉の前を通り過ぎ、一番奥にある自室の扉を乱暴に開けた。
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