第一章

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 ちょうど、部屋に置いてある振り子時計が、深夜三時を告げる鐘を鳴らした。  私物といえば、それくらい。  コンクリートの壁で囲まれた俺の部屋は、備え付けられているベッドとクローゼット、テーブルに椅子以外、何もなかった。 「ほら、俺のベッドに座れ」  ローガンの腕を放し、俺はクローゼットの中を漁る。  たしかこの中に救急箱があったはずだ。  制服の下に着るシャツをかき分けると、埋もれていた救急箱を発見した。  それを持ってローガンのもとへ戻ると、俺は脱脂綿に消毒液を含ませ、ローガンの頭に手を伸ばした。 「少ししみるだろうけど、我慢してくれ」 「い、いいよ、自分でやる」 「見えないだろ。いいから大人しくしてろ」  はりのある白髪を慎重にかき分け、消毒液が染み込んだ脱脂綿を傷口に当てる。 「い・・・・・・っ」 「悪い、痛かったか?」 「いや、平気だ」  顔をしかめながら、ローガンは微笑した。  少し、顔が赤い気がする。  俺はとっさにローガンの額に手を当てた。 「ラ、ラララ、ライアン!?」 「お前、熱あるんじゃないのか?」 「ないない! それよりも、一つ頼みがあるんだけど!」 「なんだ?」  俺が首を傾げると、ローガンは懐にある端末を操作し、画面を俺に向けた。  画面には、どこかのイタリア料理店が載っている。 「ここがどうした?」 「明日非番だろ? 昼飯食べに行かないか?」 「いいけど、俺昼まで用事があるから、記念公園で待ち合わせでもいいか?」 「用事?」  ローガンは首を傾げる。  その顎を掴んでまっすぐ前を向かせると、傷口に絆創膏を貼ってやりながら、俺は、 「ーー父さんと、母さんと、弟の墓参りだ」
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