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今から三百年ほど昔、この地上を支配していたのはヴァンパイアだったそうだ。
人を家畜のように飼い、天敵である人狼との戦争にかり出す悪魔。
そのヴァンパイアの王国は、人と人狼の連合軍ーー聖騎士団によって、一夜にして滅ぼされた。
王族は壊滅。残った眷属たちは地下に身を潜め、晴れて地上は人間と人狼の物になった。
・・・・・・だが、戦いはまだ続いている。
***
時刻は午後十時を回ったところだった。
俺は大股で公園内を闊歩し、銃のセーフティを外す。
右耳の中にすっぽりと収まっている通信機を指で押さえながら、俺は静かに言った。
「聖騎士団遊撃隊所属、ライアン・ブラックフォード。これより任務に移ります」
口にくわえていた煙草を吐き捨てながら、振り返りざまに引き金を引いた。
純銀製の弾丸は、俺の首に食らいつこうとしていたヴァンパイアの口内に進入し、そのまま喉を貫いた。
だが、これぐらいじゃ奴らは死なない。
俺はもう一丁、同じ型の銃を取り出した。
すっかり手になじんだ、全体が赤黒い銃。
それを両手に、俺は悶絶しているヴァンパイアの心臓めがけて弾をぶっ放した。
弾丸には聖水が詰められている。
眷属と呼ばれる雑魚なら、この弾を一発でも頭か心臓に浴びれば死ぬが、俺は必要以上に何発も、相手の胸に撃ち込んだ。
その隙に、背後にもう一体ヴァンパイアが迫る。
だが、俺は動かなかった。
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