プロローグ

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 横を擦過していく相棒に気が付いていたからだ。  俺は、液化していくヴァンパイアの死骸を見下ろしながら、もう一本煙草を口にくわえた。  ちょうどヴァンパイアの心臓を長剣で突き刺した相棒ーーローガンが振り返り、眉をつり上げた。 「馬鹿野郎! 普通、遠距離武器のお前は後方支援だろ、ライアン!」 「そうなのか?」 「そうだ、このニコチン馬鹿! 前線は俺たち人狼の役目なんだから、先行しすぎるな!」  確かに人間の身体能力では、ヴァンパイアに太刀打ちできない。そこは人間と友好的な関係を続けている人狼に任されてしまう。  しかし、後方支援なんて性に合わない。この手でヴァンパイアを殺さなければ。  だから、俺は前に出る。  二丁拳銃を、弾がなくなる勢いで撃ち続けるのだ。  ・・・・・・俺の人生を奪ったヴァンパイアどもを、殺し尽くすまで。 「よし。いくぞ、ローガン」 「だから、お前は先に行くなって!」  キャンキャンと泣きわめく相棒を背後に、俺は銃を構えた。  それほど広くない公園。その四隅から湧き上がるようにして現れる化け物ども。  俺は片手に煙草、片手に銃を持ち、舗装された道を歩く。  射程範囲内に獲物が入ってきた瞬間、俺は立て続けに五発、引き金を引いた。  全て心臓に命中ーーかと思いきや、一匹外していたらしい。
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