プロローグ

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 滑るように近付いてくるヴァンパイア。  俺は煙草をくわえ、空いた手にもう一丁銃を握ろうとしたが、それより先にローガンが横から飛び出す。  人間ではあり得ない俊敏さでヴァンパイアに近付くと、手にしていた長剣を横になぎ、敵の首を切り落とした。  さすがのヴァンパイアも、頭が無くなれば行動できない。俺は念のために転がっているヴァンパイアの頭を粉々になるまで撃ち、ついでに胴体に残った心臓にも残弾をお見舞いしてやった。  空になった弾倉を取り出し、替えの弾倉を手に取ると、視界の隅で何かが動いた。  言うまでもない。ここには俺たちと、ヴァンパイアしかいないのだから。 「ローガン、十時の方向から敵」 「俺に指図するなっつーの」  そうは言いながらも、ローガンはすでに地面を蹴り、俺が指示した方向へ動いている。  その間に俺は弾倉を詰め替え、紫煙を肺いっぱいに吸い込んだ。  点々と輝きを放つ星が美しい夜空。それに向かってゆっくりと煙を吐き出していたが、俺の体を、突然重圧感が襲った。 「なん、だ・・・・・・!?」  まるで、見えない手で体を押さえつけられているようなーーそんな感覚だった。  膝が折れそうになり、俺は必死で下肢に力を入れる。  その時、気づいた。  公園の奥、闇の中に一人、この世のものとは思えない美しい青年がたたずんでいるのを。  まるで青年の体が発光しているかのように、くっきりと闇の中でも存在感を放っている。
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