第一章

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 公園内のヴァンパイアを掃討し終えた俺とローガンは、迎えのヘリに乗り、家と呼ぶべき場所ーー聖騎士団本部へ輸送された。  聖騎士団は、ヴァンパイアを倒すために三百年前に作られた、化け物に対抗しうる唯一の組織だ。  同時に、人間と人狼の友好の証とも言えた。  その聖騎士団が三百年前にヴァンパイアを打ち倒したのだが、残党が地下へ逃げ込み、定期的に人間を襲う。  そのせいで未だに聖騎士団とヴァンパイアの戦争は終わる気配がないが、昔よりも人間は平和な毎日を送ることができていた。  この本部は、いわば人類にとっての希望だ。  同時に、ヴァンパイアにとっては撃ち壊すべき砦。  奴らが夜な夜な襲撃してくるが、四方を断崖絶壁に囲まれ、最も空に近い場所に建設された本部は、翼を持つといわれる王族ヴァンパイアでしか、到達できないだろう。だが、王族ヴァンパイアは先の戦争で死滅した。  眷属達は身体能力こそ高いが、崖を上っている最中に迎撃され、死ぬのがオチ。  ここはまさに、難攻不落の要塞だった。 「ーーやあ、お帰り。二人とも」  本部屋上のヘリポートに降り立つと、俺たちのような黒い制服とは違う、真っ白な制服に身を包んだ、マース・ブラックフォード団長が出迎えに来てくれていた。  第二十四代目団長である彼は、史上最強のハンターと称される程、武に長けた男性だった。  内面外面ともども温厚な彼だが、冴えた碧眼だけは、ナイフの様に鋭い。戦場において彼が制服に傷一つ付けて返ってこないことは、団内においては当たり前の事だった。  俺とローガンは姿勢を正すと、約二週間ぶりにお目にかかる団長殿に向かって、最敬礼をした。 「団長自らのお出迎え、痛み入ります」
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