第三章 「 逆光の写真 」

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レイジはすぐに手紙を開けた。 手紙の中に沢山の写真が入っていた。 手紙を読んだレイジは、笑った。 「なんだよ、これ? 手紙、ありがとうって・・・ 手紙のお礼だけ?? これだけしか書いてないよ!! ほら! ははは、ゆうさん何考えて・・・」 写真が、カウンターに落ちた。 写真には、沢山の山々の風景と、神社や寺の遠景が写っていた。 そして、誰かに撮ってもらったらしい写真が一枚・・・ 「光ってて誰だかわかんねえ!! でも、これ ゆうさんだよな・・・」 信にその写真を見せながら、レイジは言った。 「湖、かな・・・ 水の光の反射で影しか見えないじゃないか・・・ 信、これ、どこで撮ったんだろうな?」 信は首を振った。 「わからないですね。」 レイジは、ふと・・・以前古いカメラが置いてあった棚を 思い出した。 「あのカメラ、どこにしまったのかな・・・ あそこにカメラがあったんだよ。 ・・・そっか。 ゆうさん、カメラと一緒に旅をするのが、夢だったんだ・・・ ・・・なんだ、そうか。 なんで、俺に言わないで・・・」 山々の写真を見ているうちに、レイジはどこかで見たことのある 風景だと思った。 「あ・・・これ・・・」 山奥、木々の間に青い花が咲いている・・・ 「へえ・・・」 信は黙ってアイスコーヒーを淹れている。 「・・・信、今度さ、俺と ツーリングに行こうぜ。」 「はい。」 グラスの中で、カランと氷が沈んだ。 「なんだか俺も、旅行に行きたくなった。 信、おまえもバイク好きだろ?」 沢山の写真をカウンターに並べながら、レイジは言った。 「この場所な。 俺と、ゆうさんが走った場所なんだ、 全部。 ・・・信、おまえにも見せてやるよ。」 信は うなずいて、笑った。          ・・・   完   ・・・
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