『戦いを乗り越えて伏す』

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我が名はサキュバス・イリーヤ・クロエである。サキュバス族の純血種であり、王女じゃ。偉いのじゃ。 そんな偉い我は今、次元を超えて地球に留学中なのである。まぁ古来よりスタンダードな異世界への移動方法じゃな。次元を超えては。 今のこの世はそれが容易になりすぎておるがな。その理屈は神にでも聞いてくれ。我には分からん。聞いたところでこの世の生き物ほぼ全て理解できんじゃろうが。 まぁ、そんな話はよい。この世界の情勢など、今の我の関心事ではないのじゃ。 して、留学中の我はとある学院に通っておる。『人異共学白燐学院』という学院じゃ。そこには数多な異種族が生徒として在籍しておる。この世界の一大種族である人間との共存が主な目的らしい。まぁ、その道はまだ険しいじゃろう。人と異で校舎を分けている辺りに、人間の意固地さが垣間見える。 正直、我は人間について良い話をあまり聞かん。彼らは排他的で、差別的じゃ。防衛本能なのじゃろうが、される側となるとたまったもんではない。 じゃが、好きなところもある。彼らは愛に燃える。時にはその身を焦がすほど、そして周りなど見えなくほど一途になる。純愛じゃ。我はそれが眩しい。それに憧れ、我は城を飛び出した。 今ならその気持ちもよく分か……。いや、まだじゃ。まだガマンじゃ……。
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