組織を裏切った男

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更に数分が経った。イラついた雅也が怒鳴る。 「おい、アンタも男ならいい加減に覚悟決めろや。 5つ数えて飛ばなかったら蹴り落すぞ!」 にじり寄る雅也。これ以上後ずさりするコトも 出来ないし、絶望が僕の身体を覆う。 5…4…3…とカウントダウンが始まった。 ああ、もうダメだ。どちらにしても僕は頭から 真っ逆さまに落ちる。もしもそのまま地面に激突 したら、トマトみたいにグチャッと潰れて肉の塊に なるだろう。いや、これだけの高さだから途中で 気絶するかも知れない。クソッ、組織を裏切った 僕だが、まさかこんなコトになるとは…。 ふと恋人の顔が脳裏に浮かんだ。近頃自分の コトで精一杯で、彼女を大切にできてなかった のを心から後悔した。 「明美、ゴメンな。」 目を瞑り、雅也がカウント1を数えると同時に 空中に身体を投げ出した。
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