組織を裏切った男

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僕がインストラクターとグータッチを交わして いると、遠くから雅也が笑顔で手を振りながら 駆け寄って来た。 「なっ、スリル満点でスッゲエ気持ち良いだろ? 大空にダイブして景色見たら、嫌なコトとか全部 チッポケに思えるからさ。ずっと連れて行きたい と思ってたんだ。今回は初めてだからタンデム だったケド、一人で飛んだらマジ最高だぜ。 良かったらオレみたいにインストラクターの資格 目指しなよ。もっとも、オレは厳しいから生徒が なかなか飛ばねーと蹴り落すケドね♪」 「ああ、超楽しかったーーー!!」 僕は雅也とグータッチするとガッシリ抱き合った。 100m程離れた所にはクシャクシャに丸まった 雅也のパラシュートが見える。 「まあ、転職しちまうのは残念だけど、これから 仕事抜きで飲みに行こうや。机の荷物は後で 宅急便で送れば良い?」 照れ臭そうな雅也に僕は親指を立てた。 「OKOK。冷蔵庫入れっ放して賞味期限切れた 佃煮の瓶とか飲み掛けのコーラとかヤバイ物 だけもらって行くよ。後は新しい住所に送って。」 僕は来週から雅也とは違う会社組織で働く。 上司と不仲でずっと不満を抱えていた僕は ライバル会社にヘッドハンティングされた。 気まずくてギリギリまで同僚にも言い出せずに いたケド、荷物運びを頼んだ後輩の雅也からの まさかのサプライズイベント。雅也のお陰で全部 チッポケな話なんだって気付いた。 スカイダイビング、面白えじゃん。
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