思いやりと決心

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  古庄は真琴の手を引きながら岩場を伝い、滝壺の近くまで行くと、滝からの細かいしぶきが降り注いだ。 ひんやりとした空気の中、傾いた日に照らされて輝く滝を、手を繋いだまま二人で見上げる。 滝は孤高として気高く、とても美しかった。 でも、一人で見ても、これほど美しいとは感じなかっただろう。 見返りなく人を愛せる心を通せば、目に映るどんなことも優しく素直な眼差しで見ることができた。 滝を見つめる真琴の、この滝と同じように清廉で澄んだ美しさが、古庄の心に沁みていく。 滝と同化していなくなってしまいそうなほどの透明感は、愛しさを通り過ぎて、却って古庄を不安にさせた。 思わず、真琴の手をギュッときつく握ってしまう。 それに気づいた真琴が、同じように握り返してくれた。 そして、滝から古庄へと視線を移して、水滴が宿る顔で静かに微笑んだ。 ただそれだけのことで、古庄の胸は甘く痺れていく。自分の中にこんな感情が存在している…そんな自分が、古庄は信じられなかった。 30歳を過ぎて、こんな風に人を好きになるなんて。古庄の心は、初めて恋をする少年と、まるで同じだった。 それから帰りの山道、二人は言葉少なに、ただ手を繋いで歩いた。 普段、部活で体を動かしている古庄には何のことはない道のりだったが、真琴には少々堪えたみたいだ。 「滝がもう少し近いと思ってたんだけど、疲れさせたね」 そう言って古庄が心配すると、真琴は少し息を上げながら首を横に振る。
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