in the afternoon

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「うむ、これだ」  此乃子は満悦そうにうなずいた。僕はというと汗をぬぐうのに必死だ。 「これで教えてもらえるのか、母さんの暗号の謎」  ちら、と此乃子が上目遣いに僕を見た。そしてすっとはすをむくと、僕に問うた。 「君、おそらく夜の早いうちから寝落ちするだろう」 「は?」  何の脈絡もない問いだったが、的を射ている。その両方で僕は目が点になった。 「なんでわかった……」 「君と話していると、夜の話が全く出てこないのだよ。夜のテレビだとか、布団の中で何を考えているかとか」 「ああ、なるほど。うん、ちょっと前からそうだよ。気がついたら寝てるんだ。でも日中落ちることはないから、放ってるけどね。それがどうかした?」 「…………」  此乃子は黙った後、スマホをちらっと見て。 「運、次だ。次は『新日本古典文学大系』を借りてこい。十八巻だ」 「はあ!?」  僕は身を乗り出した。 「依頼一つにつき一冊だろ!?」 「今回はくれとは言っていない。だから複数冊頼んだっていいだろう。それに今、ヒントを与えてやったのだ。さあ、行きたまえ」  僕は助けを請うように執事さんを見た。けれど、彼の目も「行ったほうがいいですよ」と言っている。  僕は促されるまま、ツリーハウスを後にした。
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