in the morning

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 その木は、長く続く上り坂の上にあった。  誇らしげに広がる緑と、太い幹を持つその木は、坂道にあえぐ僕を悠然と待っている。けれど迎えに来てくれないあたり、彼女と同じで意地悪だ、と思ってしまう。無論木が動くはずはないので、そんな風に心の中で毒づく僕は、暑さでもうどうかしちゃったのかもしれない。  八月も真っただ中のお昼前、延々と坂を上っていた僕は、ようやく頂上についた。そして彼女のいる巨木に近づいていく。  上から僕の足元まで垂れる縄梯子、葉の合間から見える木造の小屋。そう――これはツリーハウスだ。  背中のリュックがきちんとしまっていることを確認すると、僕は縄梯子を登った。三、四メートルある梯子を登り終え、小屋の床に手をかけた僕を、ややハスキーがかった声が迎える。
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