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「やあ、遅かったね、運」
床に這いつくばるようにして小屋の中に転がり込んだ僕を待っていたのは、長い黒髪を床まで垂らしてぺたんと座る少女だ。
白いワンピースに黒いボレロとシンプルな服装をした彼女の周りには、文庫本や新書がこれでもかというほど散乱している。よくツリーハウスが壊れないな、というほどの量だ。
それを踏まないよう近づきつつ、僕は彼女に文句を垂れた。
「お前が家じゃなくてこんなところにいるからだろ、此乃子。家ならすぐ行けるのに、ツリーハウスまで来るの大変なんだぞ」
「ふん、家にいても父母がうるさいだけだ。花の女子大生たるもの、授業のない時は木の中で本を読まねばな」
「読書はわかるけどなんで木……?」
「本を愛する私が本の原材料まで愛して何が悪い。そして私は木の子(このこ)……木の中にいるのがふさわしいというものだ」
「字が違うだろ……」
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