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「遺書……」
「うん、これは僕あてなんだ。正式なものとは別にね。書かれているのはちょっとしたことなんだけど、気になる点があるんだ。読んでみてくれる?」
此乃子は受け取った遺書を開くと、音読した。
「今、私は生きていないでしょう。こんなことになってごめんなさい。きっと迷惑をかけるでしょう。あなたを傷つけてごめんなさい。
だけど、最後にこれだけは言わせて。あなたに伝えたい言葉。
人を殺そうとしてはいけません。例えば神の依り代が不都合なことを言っても、殺そうとすればその神に殺されるのです。93
何もへまをしていないのに職を失うことがあるかもしれない。その時、本当に必要なものとプライドとを秤にかけなさい。でなければ仕事も女性も手に入らず、何もできないから。197
周りの女の子たちは皆同じに見えるかもしれない。でもその中にきっと一人、際立つ子を見つけられるでしょう。黒アゲハの中で緑の蝶を見つけるように。238
インフルエンザには気をつけなさい。死ぬこともあるから。特にその時、自分と同じ姿をした人影を見たなら、死は必ず忍び寄るもの。229
やりたいことができないなら、できる楽しみをしなさい。野球ができなければ肝試しをするように。そのうちできるようになるから。21
三森藤子」
此乃子は読み終わると、口に手を当てて何か思案しているそぶりを見せた。
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