第5章

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だけど、こんなに真っ直ぐに あたしを見つめる彼の瞳に、 決して冗談なんかじゃなく、 ましてや5年もの間、彼を苦手だと思い 見向きもしなかったあたしをずっと 思い続けていてくれたなんて… 『俺は、みのりがいーの。 振り向いて貰えなくても、ずっと、 このチャンスを望んでた… 俺、余裕あるように見える?』 余裕あるように… みえる。 あたしは躊躇ったけど、正直に頷く 『ははっ、まじか。見てコレ。』 そう言って見せられたのは、 拳を握り過ぎて爪の跡がくっきりと ついた手の平。所々、赤くなっている。 『わっ、痛そう』 あたしの口から咄嗟に出た言葉に彼は 『痛くねーよ? 痛みもわからない程に緊張してたんだ俺。 かっこわりーよな。それだけ必死なの。 それだけ、みのりが欲しいの、俺。 “不倫”現場に出会(でくわ)して、 もう、我慢なんかできなくてさ、 他の男にみのりを触らすの嫌。 惚れた女には、自分だけで満たされて 欲しいの。ココロもカラダも。』 そう言うと、わざわざ立ち上がり、 テーブルの向いからあたしの隣に 移動してきた。
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