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俺は彼女からの反応を待つ。
わずか数分、いや、数十秒かもしれない
彼女からどんな言葉が
発せられるのかが怖くて。
涼輔は“大丈夫”だと言った。
だけど全く何の確信もないわけで…
涼輔に告白したわけでもないし
涼輔に大丈夫だと言われても
何も俺は大丈夫なんかじゃなかった
今思えば。
なんて、おかしなことを考えるくらい
俺は動揺していた。
そして、余裕なんて少しもなかった
どれくらい時間が経っただろうか、
俺を見上げる彼女の目が
しっかりと俺の目を捕らえると
『よろしくお願いします』
そう、言った。
俺は一度思考回路が停止したあと、
彼女が発した言葉の意味を理解し
一気に焦りと緊張が解けて
頬が緩んだ。
『良かった…。よろしくな、みのり。』
やっと呼べた、“みのり”という名前。
彼女は恥ずかしそうに頷くと
ふわりと微笑んだ。
その姿にいても立ってもいられなくなった
俺は思わず、彼女の唇にそっと
自分の唇を重ねた。
“これからよろしくな” と
“行ってきます” の気持ちを込めて。
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