第6章

4/9
154人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
いつかはこういう日が来ると思ってた。 でもどうして今日なんだろう… 明日から彼と渡米するというのに… そんな事を考えながらあたしは バックヤードに入り、春都さんが居る 6Bへと向かった。 ドアをノックして中に入ると 新川バイヤーは、柿沼バイヤーと 話をしながらパソコンを操作していた 『失礼します。新川バイヤー、 ちょっといいですか』 溢れそうな涙をグッと堪えて あたしがそう言うと、椅子から立ち上がり こっちに向かって歩いてきた 『どうした?』 あたしの顔を屈んで覗きこみ、 聞いてくる彼。 あたしは深呼吸をして、 平常心を装ってから 『奥様とお子様がお待ちです』 と、そう告げた。 ハッキリとそう言われた訳じゃないから 確信はなかった……けど、 あたしは賭けたんだ、、、 彼にわざとそう言ってどう反応するかを。 女って怖いもので…今、そんな心境では ないハズなのに、心の何処かでは 彼に奥さんと子供がいる事を 信じてない部分が未だにあって… だって5年もの間、彼が家族の元へ 行くのも、家族の話すら聞いたことが なかったから… “不倫” なら、そういうものなのかな。 “愛人” なんて、所詮その程度なんだ…。 そしてあたしは彼の反応を待つ―――
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!